勤め人たるもの、毎日同じ時間の汽車で通勤していれば1ダースぐらいの顔見知りはできるもの。その15、6の“お嬢さん”もその一人。避暑地に住む堀川保吉は、停車場のプラットフォームで、いつもは会わない時間にそのお嬢さんに出くわし、思わずおじぎをしてしまう。あとから不躾なことをと悔やみながらも、思い出されるのはお嬢さんの眉の美しかったこと……。芥川龍之介が自身を投影した「保吉」ものシリーズの一編。朗読はまちのなおこ(NPO法人現代朗読協会会員)、オーディオブックデビュー作は芥川「保吉」ものの美しい印象を残す...